清水康弘による劇団あとの祭りの装置に関する覚え書き

 

第13回公演〜ハードボイルドの犬達〜
(1997.8.15-17)

2005年 1月 5日

お盆の真っ最中の公演です。
よくそんな時に家族親類のしがらみにとらわれずやったものだと思いますが、みんな結婚前だからできたんでしょうね。
前回の公演から年度が変わっていることもありメンバーにも新たな顔ぶれがあります。辻太一、中村充孝、佐藤朱里らが初々しい演技を披露してくれています。
抜けたメンバーとしては原と伊東。原は仕事かな。
伊東は結婚前で不参加だったのでしょう多分。
この公演が終わった後の9月21日が式なので僕らけっこうばたばたしていたのではないでしょうか。僕はこの芝居の為に茶髪になっていて、ちょうどその時に結納返しがあって、気まずかった思い出が・・・

それはともかく、ホールのロビーにはこんな面々が
開場前の行列も恒例になっていましたね。
スタッフは相変わらずのこの人たち
小道具は基本的に自分で用意しますので、辻は米俵をつくったり(米俵には見えない、しかも仕事が遅い)、小森は「ゆで卵製造機むっちょりくん」というわけの分からない機械をつくったりしていました。
小森はあと立看板の小さいほうも担当していてシリコンで手の型取りをして石膏の手に銃を握らせたりしてましたね。
取引につかうニセ札束は中村担当だったようです。

銃といえば、このお芝居は私と土本が銃で撃ち合うシーンがあり、実際に火薬で音が出るモデルガンを使ったのですが、どこで何発撃ってどこで弾切れになって弾を詰め替えて最後に一発残して・・・というような段取りを正確に追う必要があり、大変緊張しましたね。
銃や火薬の管理は武器に詳しい川地氏が担当でした。

さて、久々の福富ストーリーはハードボイルド。真夏にコートを着込んで走りまわるお話で稽古は汗だくでしたが、本番では冷房が良くきいていた為、やせ我慢している感じが出なくて、冷房を止めてお客さんにも暑苦しい気持ちになってもらったほうが良かったのでは・・・などどいう感想も。
個人的には煙草を吸う場面がいくつかあるのですが、自分は全く吸わないので、イマイチ本物っぽくなかったようです。

装置はいつも通り、いくつものシーンをひとつのセットで見せるカタチです。
カウンターと小さなテーブルを、探偵事務所バー警察署廃屋などに転用できるように配置。登退場はセンター奥に1ヶ所と下袖のみ。
毎度のことですが、下奥上空に別空間のエリア
 ここまではまあパターンと言いますか、立ち位置を考えれば自然と決まってしまいます。

と言うよりも、このホールでこの手の芝居をやろうと思ったら、このパターン以外私には考えつかないです。他の方法があれば教えて欲しいくらいで・・・
例えば「RANBIRD」のセットを参照して頂きますと、ほとんど同じ配置になっています。上手前にテーブルセット、中央下手よりにカウンター、奥に登退場口、下奥上空に別空間のエリア。この時はより複雑な空間移動があったので段を使って奥の構造を工夫していますが、基本的には同じパターンで組んでいますね。

転換については、一回だけ波止場の取引のシーンでカウンターとテーブルのセットがひっこまなければならなかったのですが、これも全く同じ手法を使っています。それぞれのセットを12mmのベニヤに固定して、ユニットで転換しました。

さて、基本構造はさわりようがないので、問題はデザインです。台本からイメージしたのは、硬質で透明感のある空間にしたいということでした。でも線はシャープでなく丸みを持ったものがいい。

それから先どういう意図でどういう経緯をもってああいう形のデザインになったのかと言うと、これはもう正直、気分ですね。
いつもそうですが、納期は決まっているわけで本番に間に合わせなければいけませんので、自分でもよく分からないまま作り始めて、結果を見れば一応当初のイメージプランは多少生かされているかな、というくらいのもので、抽象のセットは常にそんな感じですね。

今回の場合は、円柱を使うことにして(困った時は円柱に逃げるのが悪い癖で)初めて塩ビのパイプを使いました。
背景から、カウンターやテーブル、椅子もすべて塩ビパイプで作りました。
色は全て黒。床も黒く塗ったベニヤを敷き詰めました。
それだけではつまらないので、装飾に透明シートを使いました。
過去に使った素材をカタチを変えてまた使うというのは困った時の逃げの手段でして、円柱と言い、透明シートと言い、この時の私はかなり困っていたものと思われます。

ただ製作はさほど難しくはなかったのではないでしょうか。
ただ、塩ビを扱うのは初めてだったので、木材とどう接合しようかとあれこれ考えていた気がします。結局金具を使いましたが。
構造物はシートの貼り付け手前まで作っておいて、現場で組みながらシートを巻くことにしました。そうしないとトラックに載せて運べませんからね。

シートには模様を描いておきました。単なる透明素材のままよりも立体感が出ると思いますし、塗った部分の後ろに影も出来るので。
この模様は描く人によってかなりタッチが異なるのでまいりました。
「不規則に描け!」「僕のように!」「線の太さはこれくらい!」としつこく言ってもなかなか同じには描いてもらえないもので、まあ仕方ないですね。タッチによって使う場所を考えました。

模様を書いた後、保存しておく間にブロッキングしてはいけないと思い、ベビーパウダーをはたいてたたんでおきましたが、仕込みのときにそれを拭い取るのが大変でした。これはちょっと後悔。
シートのセッティングはまあまあ予定通り。でも、風が吹いたら揺れるのはやはり避けられませんでしたね。
塩ビで作った椅子やカウンターの強度にもかなり心配していたのですが、意外ともってくれて一安心でした。

それで全体として良かったのかどうかと問われると、自分としてはちょっと消化不良の装置となりましたが、悪くはなかったかな。
まあ満足できた装置のほうが珍しいですからね。そういうこともあります。

次回は、第14回公演 ラーメン屋一代繁盛記〜こいくち のお話にしましょう。

 

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