清水康弘による劇団あとの祭りの装置に関する覚え書き

 

番外公演〜三人の地蔵
(1998.3.21-22)

2005年 1月23日

「こいくち」での達成感が強かったせいか、次の公演はもっとリラックスした感じで思い切り笑えるものをやりたかったのでした。
ミーティングで出された中島のアイデアに対しメンバーから好き勝手に追加ネタを出して、持ち帰った中島が書き始めた本がこの作品です。
主役は地蔵のかぶりもの、ネタはあまりにもお下品で、怒る人が大勢いるのではないかと危ぶまれましたが、番外公演ということでいいことにしました。
というのも、通常は公演日の前の週の土曜日にホールに入ってこってり仕込みをするパターンなのですが、その時はホールに別の予約があり木曜日に入って土曜日が初日というスタイルになることが決まっていたのです。
「おいしいキッス」以降6回の公演数でやってきて動員も増えてきているところでしたが、この公演は土日で5回のみに設定され、こじんまりとした公演になりました。公演時間も1時間ちょっとでした。ロビーにはこんな人々。

新メンバーに内倉卓見が加わりました。
彼を含めた地蔵3人衆は衣装も良くていい動きをしていました。
この頃から、自分ばかり装置をやっていては下が育たないし、自分がいなくても大丈夫な組織にしていこうと思って、この公演では内倉に装置チーフを任命し、自分は舞台監督としてサポートする体制にしたのでした。
しかし内倉はこの公演の後劇団を去っていきました。残念。

とはいうものの、プラン段階からずっと口を出し続けていたので、どこまでが彼の設計で、どこから僕の意見が入っているのか、もはや分かりません。
実際にはすべて僕の言うがままになっていた可能性もありますね。

お話の舞台、冒頭は三体のお地蔵さんが道端にあり女の子が傘を貸してあげるシーンで始まり、そのあとは最後までその女の子のお部屋という設定です。
しかし、お話の途中途中で沓名のナレーターが入りますので、その立ち位置を確保しなければなりません。

道端などはどうにでもなるので、お部屋を主体に設計することになります。
後ろに壁、壁の左右に台所や別のお部屋への出入り口、下袖が玄関方面という基本設定は早々に決まりました。
後ろの壁は2階建てにして、2階のところどころ沓名がナレーションの為に顔を出す場所を作ることにしました。
シンプルですね。

一見シンプルなのですが、実はとっとも複雑なのでした。
前側に3枚のパネル、その2階部分にも3枚のパネル。全部可動式です。
2階部分は沓名のナレーション用なので、彼に自分で紐を引いて台詞にあわせて開閉してもらいます。
1階部分はセンターのパネルを袖でオペできるようにしましたが、ラストは3枚一緒に上がって後ろにお地蔵があるというプランで、実は僕が2階に上がって3枚のパネルを1本の棒に固定して力ずくで持ち上げてます。
***そのシーンはこちら***
二階建てにするということは、柱を丈夫に立てて倒れないようにするのが当然のことでして、そのためには木材を斜めに入れて強度を持たせるわけですが、そうするとパネルを開けた時に見苦しいですよね。
でも、このホールはちょうどその位置の左右に柱が立っていますので、その柱の間に台をきちっと隙間なく並べれば倒れようがないのですね。ですから下向きの加重のみを考えて設計すればよく、結果として斜めにヌキを入れずに2階建てにできました。

最後まで悩んでいたのが素材でした。内倉とホームセンターを回って、まあ昔話が題材の芝居だから和の自然素材でと、「こも」を使いました。冬の間木に巻きつけておいてその中で冬越えをした害虫を春に剥がして燃やすためのものですね。
ホームセンターのおっちゃんとの会話で
「おっちゃん、
もちょうだい」
「なに?」
「いや、だから、
も」
「ああ、こ
か」
アクセントが違ったみたいです。

生の藁の色では味が出ないので、薄くこげ茶を塗ってパネルに仕上げました。
いい味にはなったのですが、若い女性の部屋にはまったく不似合いなみすぼらしさになりました。

製作で最も手間をかけたのはなんと言っても3体のお地蔵様。
もともとは伊東亜樹の担当で僕も最初はほったらかしでしたが、彼女がある日大きな発砲スチロールのブロックを3つ買ってきました。
マジ、それでつくるの?とちょっと不安げな人々をよそに作業開始。僕もなんとなく心配で作業に加わってしまいました。
毎週稽古場でブルーシートを敷いて作業しました。電熱で切る道具があると良いのでしょうがなくて、のこぎり、カッターナイフなどいろいろ使いましたが、一番使いやすかったのは包丁でした。
最後には我が家の1部屋が工房になり、夜なべしてやっと完成。しばらくスチレンの臭いが残留し不快でした。
仕上げは彩色。装置作業の日に作業場に持って行って、グレーをベースに塗った後黒白の点々をはねとばして完成。前掛けは小川さんが作ってくれました。
かつてなく魂のこもった装置になりました。
なんとなく捨てられなくて今も劇団の倉庫に置いてあります。だれか使ってくれませんか?

さて、芝居のほうはなんにつけ下ネタばかりで、僕と小川が双子のばばあをやったり、江尻が顔を金色に塗って二ノ宮金次郎になってはじけた芝居をしていたり、浅野が全身タイツだったり、小森の衣装がコートのみだったり冒頭の沓名からこれでしたから、やっている方としてもちょっとついていけないようなシーンもあったのですが、お客さんはよく乗ってきてくれました。
まあ、トータルでは楽しい芝居でした。今ビデオ見てもおかしくてしかたないですしね。

次回は第15回公演「ケーキが食べたい!」です。

 

メニューに戻る

 

劇団あとの祭りメインメニューに戻る