清水康弘による劇団あとの祭りの装置に関する覚え書き

 

〜序章〜

2003年5月25日

こんにちは、清水康弘です。
このコーナーは、劇団あとの祭り13年の歴史すべてを知る私が、そのなかでも特に装置(セットですね)に的を絞って、公演ごとの装置に関する解説、製作秘話等々をお話しようとするものです。

さて、今日は初回でもありますし、まずは劇団あとの祭りの装置としての心得を述べてみようかと思います。

わたくし、別に設計を勉強したこともなく、用語や基礎知識もよくわからず、学生の頃は絵画やデザインも苦手で(美術は2でしたし)ホンモノの装置の方にはちょっと恥ずかしいようなものですが(パクリもありますし)、それでもとにかくお客さんにも劇団員にもなんとか認めてもらおうとがんばってきたつもりで(中には「あれは失敗だった」なんて思うものもありますが)、まあそういう苦労話みたいなページになるかもしれませんが、私が何を考えてこんな装置を作っていたのか興味のある方は暇つぶしにでも読まれたらいいんじゃないでしょうか。

まず、劇団あとの祭りの公演会場は、岐阜市柳ヶ瀬にある御浪町ホールにほぼ固定しており、このホールは舞台平面図を見ると分かるように、上袖(かみそで)がないのですね。
上(かみ)というのは客席から舞台に向かって右の方のことで、逆に左は下(しも)と言いますね。袖というのは舞台からつながって左右に伸びた部分で、そこで俳優や転換用のセットがスタンバイするところですね。
で、このホールはその袖が下にしかなく、なおかつ高さが2メートルしかないのですね(袖の天井の上は楽屋なのです)。又、舞台の間口は2間半(4メートル50センチです。舞台の世界は尺貫法なんですね、私はいまだに慣れません)という狭さ。今ではみんなこのサイズに慣れてしまって、たまに別のホールでやることになると「こんなに広いところでどうしよう」とか「あ、右側からも出られるんだね」なんてことになるんですね。
この役者の目線まで間近で見える狭さというのは芝居にとってはけっこう良い空間ということにもなるのですが、装置としては苦労するひとつの要素でもあり、逆にその不自由さのおかげで出てきたアイデアもあるわけで、苦労を乗り越えていいセッティングが出来たときはこっそり喜んでいるわけです。

逆に、間口が狭いかわりに奥行きがあることと、天井がけっこう自由に使えるのは大変有難いですね。なんか上のほうの駆動部でトラブって、本番中に天井に上って直したこともあります。お客さんからは見えない位置ですし。

劇団あとの祭りの場合、演出から装置に対する具体的な要望が出ることは少なく、基本的な行動線と場面転換部分の確認だけして、あとはこちらにおまかせという感じです。
つまり好きなようにやらせてもらえるのですが、この場面転換というのが曲者なんですね。芝居の流れを妨げないよう、かつ美しく速くしなければならいのですが、初期の頃はかなり失敗率が高かったですね。最近ではおかげ様で大きな失敗はなくなってきましたが、やはりプランニングの出来と、現場で偶然に発生する現象をいかに把握しつぶしていくかという作業がポイントですね。
転換要員は当然役者が兼任するんですね。役者は本当なら役に集中したいところですが、転換や段取りの多い芝居の場合は袖にいても気の休まる暇はないくらいに忙しくなってしまいます。みんなには申し分けないのですが、文句も言わず(いや、言ってますが)よくやってくれてると思います。

装置製作も男の役者が兼任していますが、こちらは時間のやりくりが年々厳しくなってきました。みんな忙しいんですね。最近は土曜日を3回くらいつぶして完成させられる程度の装置しか現実に出来ないですね。昔は今思えばなんでそんなに時間がかかるのかと思うくらい長時間やっていたように思うんですが、やはり要領は良くなっているんですかね。

製作上ではお金と品質の問題がつきまといます。当然使えるお金が限られていますので、そのなかでどこまで出来るかは深刻な問題ですね。ある程度のものを作ろうと思うと最低限必要になる金額があり、チケットを売る心構えも変わります。
あと、プランは立てたものの自分の製作能力を超える場合があります。これはもう業者さんにお願いせざるを得ないわけですが、これもお金がからんでくることですね。私の場合は「困ったときの松尾さん」と言って、いつもお世話になっている方がいらっしゃいます。私達の仕事なんてやっても儲からなはずなんですが、ありがたいです。

ホールに入ってからの仕込みは遅いです。これは反省すべき点ですが、今はどうしようもないですね、これは。なぜかというのはまた次回以降にしましょう。

こんな感じで、劇団あとの祭りの装置のほとんどすべてを手がけてきましたが、毎回「もうネタ切れ、なにも出ない」と言いつつもなんとか必死でやっています。ちょうど今「彼女に関する覚え書き」の装置プラン作成に向けてそんな状態です。

次回からは、劇団あとの祭り旗揚げ公演「けれどスクリーンいっぱいの星」から順に、1作品ずつ検証していこうと思います。
ではまた。

 

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